2022.03.22

知る人ぞ知る、
銀座の名物ハイボール

今回お話を聞いた方
バー「ROCKFISH」店主
間口 一就さん
KAZUNARI MAGUCHI
銀座のバー「ROCKFISH(ロックフィッシュ)店主。1969年、愛媛県の愛南町生まれ。2002年に銀座へ出店し、看板メニューのハイボールをはじめ、オリジナリティに富んだ多彩なおつまみメニューも提供する。ハイボール人気の火付け役とも言われており、氷を入れない角ハイボールを求めて、足しげく通う常連客が多い。近年は日本各地や海外で「出張ハイボール」のイベントを行うなど、活躍の場を広げている。おつまみがテーマの著書が多数発刊されており、『バーの主人がこっそり教える味なつまみ』、『缶つまデラックス』など。
銀座のバー「ROCKFISH(ロックフィッシュ)店主。1969年、愛媛県の愛南町生まれ。2002年に銀座へ出店し、看板メニューのハイボールをはじめ、オリジナリティに富んだ多彩なおつまみメニューも提供する。ハイボール人気の火付け役とも言われており、氷を入れない角ハイボールを求めて、足しげく通う常連客が多い。近年は日本各地や海外で「出張ハイボール」のイベントを行うなど、活躍の場を広げている。おつまみがテーマの著書が多数発刊されており、『バーの主人がこっそり教える味なつまみ』、『缶つまデラックス』など。
銀座・不動の名店Bar
東京・銀座。銀座7丁目の裏通り。ビルの7階に知る人ぞ知るBarがある一。 すぐそばには“ニッタビル”。 愛媛県人にはお馴染みの新田学園の創設家、新田家ゆかりのビルだ。 今でもニッタの文字が銀座の街に浮き上がっている。 こじんまりとしたバーの店内は、8人ほどが飲めるスタンディングのカウンターにテーブル席が3つ。 15時オープンという、バーにしてはかなり早い時間の開店と共に常連客が訪れる。 バーの名前は「ロックフィッシュ」。日本語にすると「カサゴ」、愛媛の方言では「ホゴ」だ。 「本当はBarホゴにしてもよかったんですけどね」。そう笑うこのバーのマスター間口一就さんは、愛媛県南宇和郡(旧城辺町松本)の出身。 「客層は銀座という土地柄、17時以降はサラリーマンが多くなるけど、それまでの早い時間にはライターやカメラマン、自由業の人たちが、珈琲を飲むならロックフィッシュで一杯ハイボールを飲もうかという感じ(笑) 間口っちゃんの顔見にきたよ! というご年配の方も多いですね」。 隣に座った客と会話をすると、虎ノ門の一流若手女性弁護士…なんてことも。 それぞれが仕事帰りに癒しを求めて、リラックスするためにまるで止まり木のようにここを訪れる。 名物はなんといっても「ハイボール」。 これが普通のハイボールとは一味も二味も違うのだ…!
至極の一杯、名物ハイボール
Bar『ロックフィッシュ』のハイボールに氷は入っていない。 冷凍庫で冷やしたサントリー角瓶に、提供するギリギリまで冷蔵庫で冷やしたウィルキンソンの炭酸水を1:3の割合で注ぐ。そこに、親指くらいの大きさのレモンピールを絞る・・・。 まず、レモンの爽やかな香りがふわっと押し寄せてくる。そして、ウイスキーのボディーを感じた後、炭酸が思った以上にスッと喉を超えていく。これが間口式ハイボールだ。 グラスも直前まで冷凍庫で冷やしているので、氷を入れなくても冷たさが持続する。 この味は自宅で再現しようとしても、なかなか同じ味にはならないと常連客たちは言う。 まず、使っているサントリー角瓶は、一般的に出回っているものは40度だけれど、ロックフィッシュで使用するものは43度。そして、ブレンドも昔ながらのスモーキーでピートが効いたものを特別に仕入れしている。それから… 「習字で『一』という字を書いたとしても100人いたら100通りの『一』が完成するでしょ。それと同じで、お酒もやっぱりその店でしか自分にしか出せない味っていうのがあると思うんですよね。僕も自分で作るこのハイボールは角ハイボールの中で絶対に一番美味しい!と思って作ってます」
南宇和の美しい自然と豊かな思い出
「地元の南宇和は海・山・川、自然が本当に豊かでした。 小、中学校の頃は近くの深浦漁港あたりで友達たちとよく釣りをしてて。週末は自転車に竿を積んで、ちょろっと糸を垂らしてよくホゴを釣ってたんですよ。で、それを家で味噌汁にしてもらったりね。」 間口さんは18歳で大阪に出るまで愛媛県南宇和郡(旧城辺町)で過ごした。 僧都(そうず)川という大きな川が町中を流れる城辺町は、平成の大合併を経て愛南町となっている。 愛南町は愛媛の最南端に位置し、息をのむほどの美しい絶景が広がるスポットが点在する。100mを超える断崖から九州に沈む夕日を眺められる高茂岬や、入江に面した急斜面の民家に積み上げられた石垣の里。幕末の頃から台風などの災害から身を守るために積まれた石垣は、「日本の美しいむら農林水産大臣賞」にも選ばれるほど。 そして、なんといっても宇和海に面しているため、マダイにカツオ、全身がトロと言われるスマ、ヒオウギ貝など、海の幸がとにかく豊富である。
東京で挑戦する楽しさ
間口さんは18歳で大阪へ、学校に通いながらバーの道へと入った。開業して20年、現在は故郷とは真逆とも言える、ビル群に囲まれた東京のど真ん中、銀座で店を構えている。 ロックフィッシュはこれまでに様々な企業とコラボレーションをしている。数年前には湖池屋とコラボしたポテトチップス(ロックフィッシュの名物おつまみ:オイルサーディン味)が販売された。 「商品が販売された時に、コンビニで自分の顔が載ったポテチのパッケージの隣に志村けんさんの顔が載った商品が並んでて。いや~これはやっぱり東京ってすごいな!って思いました(笑) これは都会に出てきたからこそできたことかなとは思いますね」。 他にも、ユニクロとのコラボレーション。ユニクロ銀座店が、2021年9月のリニューアルオープンに合わせて「銀座のご近所さんTシャツ」を販売した。銀座数々の名店10屋号の中選ばれ、「ROCK FISH」のロゴが入ったTシャツが完成。 決して自らが売り込みをしている訳ではなく、それらの企業から突然連絡がくるのだというのだから、やはりこのバーと間口氏の人柄にファンが多いことが伺える。
ロックフィッシュを語るには外せない「おつまみ」
固定のメニューは8種類ほどあり、そこに日替わりメニューが約5種類。 いつ来てもオリジナリティに富んだ新しいメニューがあり楽しい!と感じる絶品のつまみは、間口さん自らが手を加える。その腕前はレシピ本を出版するほど。 中でも一番の人気メニューは『オイルサーディン山椒焼き』。京都の竹中缶詰を使い、余分な油をきって酒・しょう油を足して胡椒をひとかけ。そこに実山椒の佃煮をのせたら完成。他にも、『奈良漬けチーズ』は、奈良漬けとプロセスチーズを交互に並べ、発酵食品の意外な組み合わせを楽しめる。『じこいか(愛媛県産)』も、噛めば噛むほどに味わい深く、ファンが多い逸品だ。
県外に出て、外から見た愛媛
県外での暮らしが長い間口さんが、今感じる愛媛。 「もう一回改めて地元のものを見てみるとすごく面白いものがあるかもしれないですね。愛媛は瀬戸内海があって石鎚山もあって自然豊かで食材が豊富ですばらしい環境。その良さが県外にもっと伝わるといいなと思います」。 東京で愛媛のアンテナショップを覗くこともあり、その際にもっと『変化球』があればより愛媛の良さを認識してもらえるのではと感じることがあるそうで、「例えば、みかんゼリーにしても、味を微妙に変えていくとかではなく、じゃあそのみかんを使った全く別の食べ物にしてみるとか。みかんの酸味を上手く使った商品にするとか。これまで見たり食べたりしたことがあるものではなく、県外の人がワっと驚くような面白い仕掛けができたら愛媛の食材やモノの出口の範囲はかなり広がるんじゃないかと思います」。 人々の目に止まるきっかけとなる仕掛けが加われば、その魅力は何倍にもなり得る。ふるさと愛媛へ想いを馳せながらそんなことを話してくれた。
思い出に残る「出張!間口式ハイボール」
間口さんの活躍の幅は広く、パリ、上海、香港、シンガポール、沖縄etc…イベントやパーティーなど国内外問わず呼ばれた先でハイボールを振る舞う「出張ハイボール」も行っている。 「1泊3日でドバイにいったこともあります。行った先ですごい頑張ったのに大赤字になったこともあるけど(笑)それでも、出張先では色んな出会いがあるし、後日ロックフィッシュに寄ってくれて、想い出話で盛り上がったり。思い出に残るハイボールっていいなと思ってて」。 今後も「間口式ハイボールを!」と言われたら、愛媛をはじめ色々な場所に出向いてハイボールを提供したいという。 ロックフィッシュが海の中を自由に泳ぐように、間口さんも日本中を、いや世界中をハイボール片手に自由に飛び回る。名物ハイボールとその人柄を各地で感じられる日も近い!?