2024.02.07

料理は、もっともっと夢のある楽しいもの ~料理研究家 浜内千波先生インタビュー~

発想のユニークさやクリエイティブな仕事ぶりには定評のある料理研究家・食プロデューサーの浜内千波先生。料理を通じて家庭や社会を幸せにするため、要望があれば全国どこでも、鍋・釜を持ってお役に立ちに行くという浜内先生に、愛媛の地域産品や22_Ehimeへの期待について大いに語っていただきました。

2023年12月21日 東京都東中野にて
聞き手 (株)フレンドシップえひめスタッフ

今回お話を聞いた方
料理研究家・食プロデューサー
浜内 千波さん
Chinami Hamauchi
徳島県生まれ。『家庭料理をちゃんと伝えたい』という思いで、ファミリークッキングスクールを主宰。『料理は、もっともっと夢のある楽しいもの』をモットーに各種メディア・講演会に出演、著書多数。「健康をテーマ」にした楽しい講演会が好評で、食ビジネス全般においても商品開発・メニュー開発、コンサル業務に携わり、キッチン用品「Chinami」も立ち上げている。
徳島県生まれ。『家庭料理をちゃんと伝えたい』という思いで、ファミリークッキングスクールを主宰。『料理は、もっともっと夢のある楽しいもの』をモットーに各種メディア・講演会に出演、著書多数。「健康をテーマ」にした楽しい講演会が好評で、食ビジネス全般においても商品開発・メニュー開発、コンサル業務に携わり、キッチン用品「Chinami」も立ち上げている。
1. 愛媛県とのつながり
㈱フレンドシップえひめ(以下、FSE)  まず、愛媛県とのつながりについて教えてください。

浜内  昨年、愛媛県松山市の農林水産物ブランドのブランド力を向上させようという事業にお誘いを受けタッグを組ませていただきました。愛媛県は講演に伺う程度のご縁で、よく知っていたわけではないのですが、私自身、同じ四国の徳島県の出身ですから、今東京に住む私にとっては懐かしい思いがする場所ですね。

FSE  同じ四国の土地を踏むと落ち着くというか、穏やかな気持ちになりますね。

浜内  そうですね。ふるさとのDNAというのはすごい。田舎の言葉が似ていたり、食文化が近かったりすると、とても親近感が湧きます。
2. 地域の農林水産物ブランドについて思うこと
FSE  その松山市の事業の中で、先生は市民向けの料理教室もされたのですよね。

浜内  今回の料理教室の食材は松山のブランド産品ということで、高価なものもあったので、例えば、高級柑橘の「紅まどんな」はパスタに加えたり、フルーツサンドにしたり、少量でもみんなが楽しめるようなメニューに仕立てました。それらは普通のみかんでも作れますが、「紅まどんな」は味が凝縮されつつ、品の良い味なので、少量でも皆さんが満足できるように工夫しました。

FSE  完成した料理の写真を拝見しましたがとても美味しそうでした。

浜内  料理教室では、参加する皆さんのテンションが上がり、誰でも失敗しないで作れるお料理であることがとても大事です。そのために、時間や技術レベル、満足度、それら全部含めて、皆さんが同じようにゴールができるメニューに落とし込むのが講師の腕の見せ所なのですね。
FSE  松山での参加者のアンケートも拝見しましたが、みなさん、とても満足されていました。そのまつやま農林水産物ブランドの食材の中で、これはおすすめできるっていうものはありましたか?

浜内  どれも素晴らしいものばかりですが、高級柑橘の「紅まどんな」と「せとか」がほかにはないブランド産品かなって思います。

FSE  その2つは松山のブランド産品の代表格です。ほかにおすすめはありますか?

浜内  「松山アボカド」がおすすめです。まだ全国的には十分に知られていないようですが、生産者のアボカドにかける熱量は相当なものがあると感じますし、品質はとても良いので、取り組む価値はあると思います。
FSE  確かにアボカドにかける生産者の皆さんの思いや努力はかなりなものがあるので、それも含め、「松山アボカド」を全国の人たちにも知ってもらいたいですね。

浜内  料理教室に参加した皆さんは、松山産のアボカドがあることは知っているけれど、食べたことがないと言っていたので、販路拡大に取り組む関係者のみなさんは、県外だけではなく、地元のみなさんにも食べていただけるように取り組まれるとよいと思います。

FSE  地元の人が食べているし、いろいろな人が食べていて、それで美味しくて、また買いたくなる、人に勧めたくなる、贈りたくなる、ということですよね。

浜内  そうです。輸入アボカドは皮を食べるなんて考えもせずに捨てていますけど、国産のものの中には皮まで柔らかく、食べられるものがあります。「松山アボカド」もそうでした。安全安心で、太陽の光をたっぷり受けているから栄養価も高く、皮もチップスなどにしていただくことができます。ですから、消費者にそうしたアピールや情報提供を積極的に行っていくとよいと思います。

FSE  単に商品だけ並んでいると皮が薄いことすら分からないですし、栄養素もたっぷりあって、皮も食べられるってことがきちんと説明されていると、地元産の価値も分かりやすくなりますね。
3. 地域産品の存在意義とは
浜内  それから、今は世界情勢や経済情勢の変化で食の問題は大きくなっていますよね。だからこそ、ちゃんと地元の消費者のみなさんもタッグを組んで地元産品を応援していくべきだと思います。単に地の物だからとか、もったいないからとか、地元の農家さんが一生懸命作ったからではなくて、地産地消の意味合いが本当に現実味を帯びてきました。そんな時代になりましたね。

FSE  私たちの食をどう守るかという問題ですね。その問題の中には、担い手のこともあると思うのですが、最近は農業に対して熱量のあるアクティブな若い人たちもいて、後継者問題に希望を持てるようなことも見聞きします。

浜内  そうですね。後継者問題はどの業界でもあることだけど、これだけ時代が変わってきて、いろいろな価値観を持つ若い人たちがいる中で、今後どうやって次の世代に繋いでいくかということはとても重要ですね。そのような中で、今は農林水産業も新たな担い手を柔軟に受け入れる状況になっています。若い後継者のみなさんが自分の考えを持って取り組めるようになっているので、農林水産業にも多様性が生まれてきていると思います。

FSE  先生はいろいろな地域に行かれて講演や料理教室などをされていますが、地域の産品を料理の食材に使うということについて、どのようにお考えですか?
浜内  食にもハレ(非日常)とケ(日常)があります。例えば、まつやま農林水産物ブランドの食材はハレの料理に合うと思いますね。料理でみんなが豊かな気持ちを持てたり、一緒に楽しめたりしますし、テンションも上がりますよね。
つまり、こういった食材を使ったハレの料理は、まさにイベントに向いていて、コト体験できるものなの。「食事って楽しいよね」「作るっていいよね」「地元の食材っていいね」っていう、みんなをポジティブな気持ちにするツールとして、私は地域特有の優れた産品がとても必要だと思うんです。

FSE  おっしゃる通りハレの料理は地元の食材の良さがとても分かるし、誇らしく思えます。

浜内  それから、観光にも役立つと思うの。例えば、せっかく松山へ旅行するのだから何か地元ならではの美味しいものを買ったり食べたりしてみたいと思って、どんな名物があるのか探すとテンションが上がりますよね。そういった時にハレの料理や食材があることで、松山への旅行の期待感が高まっていくわけですね。

FSE  地域産品が松山観光への入り口になるのですね。

浜内  そうそう。今度松山に行った時にこれ買ってみようとか、あれ食べてみようとか、そのために事前にちゃんと調べますよね。最近は、ほとんどの人たちが旅行するときに、そんな動き方やプロセスを踏んでいるのではないかしら。現地に行ったらなんとかなるとか、適当なものを選ぶということはなくて、何か新しい発見や感動が見込めないのであれば松山へは行かないってことになる。
みなさん、地元の優れた食材でハレの料理などを味わいたい、その土地ならではのコト体験をしたいと思っていますよね。そういうことの橋渡しとして、22_EhimeさんのようなECサイトが役立つといいですね。

FSE  ECサイトの大事な役割ですね。

浜内  そうなの。私たちが美味しいものや栄養のあるものをいただくことは、生産者からずっと繋がっているのですよ。美味しいものを食べると幸せを感じますし、せっかくなら体のためになるものを食べたいですものね。どんな食材でもいろんな部分に栄養があって、捨てたらもったいないこともたくさんあるわけです。
浜内  例えば、カブの葉にはβ-カロテンやビタミンCがたっぷり含まれているのに捨ててしまっていて、代わりに他の果物を食べて栄養素を補おうという考えが一般的にされているわけです。だから、生産者は「安全安心で、美味しく、栄養価の高い農産品を消費者に届ける」という思いを、農産品をお渡しする卸業者や販売者にしっかり伝えて、それが販売者から消費者に伝わっていくと良いですよね。そうすれば、その産品の価値は上がるし、生産者もやりがいを感じて、よりいいものができるという循環が生まれると思うのですよ。

FSE  そうですね。単に物だけ流通させればいいってことではないですね。

浜内  生産者の思いも含め産品の本当の価値を消費者に届けることに、流通に関わる皆さんが責任を持つことがとっても大事ですよね。22_Ehimeさんにもぜひその役目を担っていただきたいと思います。
4. 22_Ehimeに期待すること
FSE  それは責任重大です。あらためて、22_Ehimeに期待することは何でしょう?

浜内  数あるECサイトの中から、22_Ehimeさんを消費者が選ぶまでのプロセスをちゃんと探り、深掘りしていただくとよいと思いますね。
そもそも、愛媛に縁もゆかりもない人に愛媛の産品を推してもらうことは難しいので、なぜこのECサイトにある愛媛の産品はいいのか、なぜ希少価値があるのか、どういうプロセスでこの商品が作られているのかを知れるようにして欲しいと思います。例えば、みかんにはいろいろな種類があって、生産者もたくさんいらっしゃる中で、なぜこのサイトにあるみかんを買うとよいのか、その理由がわかると良いですよね。

FSE  そのためにもっと深い情報というか、生産者さんの情報だったり、作られている過程であったり、こだわりであったりをきちんと情報発信していく必要がありますね。
浜内  農家さんは自然を相手にしているので必死だと思うのですよね。自然界の厳しい条件下で知見や経験をたくさん積んだ農家さんに育てられた農作物ってすごいな、感動するなと、消費者の皆さんに思ってもらえるように、生産者の声をしっかり聞いて、産地と連携して、自信を持って発信していくことでより魅力的なサイトになると思います。

FSE  22_Ehimeを運営するフレンドシップえひめは、金融の愛媛銀行やマスメディア・情報の南海放送、情報・出版・印刷のセキという地元の企業3社が出資して運営していますので、地域のためにそういうことにきちんと取り組んでいきたいです。

浜内  そのためには、生産者がこだわりを守りつつ、更に少しでも良くしようと考えていて、昨年より今年、今年より来年もっといいものができるという自信を持っている地元の商品を扱っていくことがとても大切だと思います。

FSE  トレンドばかりを追いかけるのではない、地に足の着いた商品、それでいて常に進化する商品ということですね。

浜内  そして、生産者と流通者、消費者の結びつきだけではなく、よりグローバルに地球環境問題やSDGsの視点を持って、そうした教育を受けている若年層の皆さんがサイトに面白さを感じたり、深掘りしたりして、このサイトの商品を贈りたいと思えば、それが環境や社会のためになるのですよね。その中で一人でも多くの方が手をつないで、22_Ehimeさんのファンが増えていくのを期待したいですね。

FSE  それはまさに、22_Ehimeのサイト冒頭にある「22世紀まで残したいえひめの選りすぐり~ゆたかな風土を纏ったモノ、何十年、何百年も前から受け継がれてきたモノ、つくり手の想いが感じられるモノ、地球環境やいのちに向き合ったモノ」をお届けしたいという私たちの思いを追求することなのですね。

浜内  そうですね。がんばってください。

FSE  はい。浜内先生、今日は、大変貴重で示唆に富んだお話をいただき、本当にありがとうございました。